川の源/遊羽
川を見て我思う
その源の遠さを
時を隔てゝ巡り会う偶然と
この足で立つ大地の必然
水面の耀きは一瞬たりともとゞまらず
似て非なる形を繰り返す
遠くの雨の記憶
人々が流す汗や涙の記憶
誰も気にかけることのない万象
易々と読めてしまう未来に向かいつゝ
一秒後の確信などは微塵も持てぬほど
不安定なその源の遠さ
地図を辿って虚像を求めるも
想像というおぼつかぬ足下の震えに
一瞬の心地よさを覚え
川とゝもに
我 こゝにたゆたう
いつからこゝに流れ
どこで流れを束ね
誰に向けて束ねを手向け
何を求めて…
愚問は積み重なるばかり
その間にも見過ごしてしまった瞬間が目の前を通り過ぎる
どこかの雨の証拠が
誰かの汗や涙の証拠が
深く考えとゞめられぬ万象として
川の源の遠さに従い
人知れず過ぎてゆく
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