恋詩木/木屋 亞万
恋歌に憧れていた僕は
物語に紛れ込みたかった
ある日、ふと気付く
僕は目になりたいのだ
彼らを眺め続ける透明な視点
春が来て
僕はあなたに恋をした
立っているだけで精一杯
好きだった、
じわりと
赤いインクが心を染め
呼吸がとても優しくなった
あなたを想う詩を作った
いくつも、いくつも
あなたに読まれるはずがないのに
届くかもしれないという
希望を捨てられず
書き続けた
あなたは僕と知り合う前に
目の前からいなくなってしまった
僕はただの透明な木だった
これはあなたの詩です
誰が何と言おうとあなたの詩
あなたは僕を知らないし、
僕
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