ぼくは仕事ができない/れつら
 
に火をつけるのを見てから
ようやくぼくも咥える
だからいつも3分の1くらいは吸えないで
揉み消す
上手くできなかった仕事が
灰皿の上で棒状に折り重なっていく
ぼくは仕事ができない
一礼して、荷物を下ろし、札をつけ、あるべき場所へ運ぶ
誰にでもできる簡単な仕事が
ぼくはできない
店中の音がきらきらと跳ねて汗腺を埋める
片耳だけつけたイヤホンから聞こえるノイズで
頭が左に傾いていく
しまいに真っ直ぐ立てなくなって
ぼくを動かす画面の色が見えなくなる
もうすぐ転ぶだろうというところで手が着けてしまう
立ち直れてしまうぼくは
間違えました、と傾いた唇を上げて目じりを下げて
間違えました、とくるりと向き直り
間違えました
こんなところに立っていて
涙を落としそうになっているのもたぶん
何かの間違いです
また巡回路を歩きながら
間違い探しをしている
ぼくの頭が間違いです


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