嘘についての断片/健
めんなさいを
はいて捨てました
ゴミ箱へ捨てました
その間も
優しい人たちは 優しい人たちのまま
ゆっくりと 育っていきました
西の空の上を
オレンジ色の予感が歩きはじめるころ
床一面を埋め尽くした
新たな言葉たちを見渡して
彼女にはもう
することが残っていませんでした
誰もいない部屋の中で
静かな嘘だけが小さく響いていました
※
「背中を向けて」
最低の嘘
を
愛しているうちに
いつしかそれは
カレンダーに紛れて
去って行きました
身勝手な私から
開放され
それはもう
本当に
本当
に
輝いていました
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