じいさん/Ohatu
じいさんが縁側で苺を食べてた
ばあさんがスーパーで安く買ってきた苺を
安い苺は酸っぱいよ、って言いながら
じいさんちの庭は、誰も手入れをしないから
荒れ放題だ
じいさんが引っ越してきたときからあったという椿の
一番下の枝に雑草が届いている
最近は暖かかったり寒かったりだが、今日は温かいほうだ
露をかぶった雑草は、低い冬の日に照らされて眩しい
じいさんは、苺に飽きると、おい、とばあさんを呼ぶ
ばあさんは、返事もせず茶を持ってくると、苺の器を取り上げる
じいさんが、安い苺はすっぱいよ、と顔も上げずに言えば
ばあさんは、もういない
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