「 うろこのこころ。 」/PULL.
もう鰓呼吸の仕方も忘れちゃったねと夫は肺で煙草を吸うので。
なまぐさいのはなつかしい手紙なくしてしまった鱗が痛くて。
昼は泣きながら鰯を焼いて食べたなつかしい鱗の味がした。
水族館でよく眼が合うあなたの鰓におもいで疼き。
水槽越しに見つめ合って魚だったころのあたし水葬する。
なまぐさい臭いの男の後をつけまたシーツの浜に打ち上がり。
水性インクで書かれた手紙は海に身投げして記憶をなくし。
気持ちを綴るのは苦いただ染みをつくるだけならいいのに。
あなたにとっては汚れた手紙わたしにとっては指を汚した紙。
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