不具の変身/餅月兎
 
か細い声が聞こえた


電線の上
早起きの小鳥たちが小首をかしげる
埃っぽく煙った路上
散乱する朝の気配
大型トラックが排気ブレーキの音を響かせる
始まりと終わりの時間を行き交う車たちはどこか忙しげで
いつからかそこにある
過去を辿る事を許されぬ
襤褸切れのような獣の死骸を
遠巻きに避けて通過する

さよならの残響が
窮屈そうに並んで
ベルトコンベヤーの上を流れてゆく
ただ見送るだけ
そのひとつを捕まえ
抱き締めることの出来ない
生まれ持った淋しさのようなものを
あの人に真っ直ぐに言い当てられて

喫茶店の小さなテーブル
向かい合う人の目を見られなく
[次のページ]
戻る   Point(5)