ある旅人/
こしごえ
喪失した傷は取り返せない
異次元の彼方に漂着した 傷に
いつかあなたは口づけ青ざめる
日の出直前の白白とした空のように
種子の記憶が芽生え。
ミシミシ、と殻は青ざめ幽かに
震えつつ怯えつつ
つらぬかれ突き破られて
静かな産声を激白する
わたしはここです。と
生まれ落ちた瞬間
すでにうしなっているのです
自分自身を
だからこそ、微笑み
あるきつづける
探し求めて
森深い水脈から湧き出る清水のように
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