日常の味/小川 葉
 
それから薬局に
あかすりを買いに行った
せめて自分の体をきれいにしたかった
とでも言うような気持ちになったんだろう
血のような色のあかすりを買って
病院に向かった

薄暗いレントゲン室で
全身が影になってしまったような
気持ちになっていたたけれど
お医者さんの話を聞くと
肺の血管と思われたけれども
少しぼやけて写っていたので念のため
ということだった
影と思われたそれは肺の血管だった
くっきりとそれは写っていて
血が流れているようだった
異常なしだった
ほっとした

帰宅して
今日の経緯を妻に告げると
異常なしであったことを告げるより先に
えっ!お弁当は?と、きょとんとしてるので
あわてて鞄の中を見てそれに気づいた

申しわけない気持ちになって
夕食にお弁当を食べた
いつもと変わらない
当たり前のようにそこにある
日常の味が懐かしくて
嬉しかった
 
 
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