三月の砂浜で/瀬崎 虎彦
 
体の重さ
温もり
重さ
動かないこと
動けないこと

心の渇き
耳の奥で砂が
コロコロ鳴っている
鳴り続けている

祈りに似た気持ちで
軽やかに砂を蹴る足
君の輪郭を
眺めている目と眼

満ち足りて二人ね
ソファーに沈み込んで
花の香りに噎せ返るようにね
悪魔の季節を待ちましょう

手の重さ
うなじの冷たさ
髪の長さ
君の温度
君の湿度

君しか見ていないといっても
嘘みたいでしょ
君しか見ていないなんて
お話にならないでしょ

だからね

本当に
本当に
大切にしているって
伝えられなかった
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