飛び降りる/小川 葉
 
 
 
とても高いところから
飛び降りていたなんて知らなかった
飛び降りていた自覚もないのに
それこそが生きてる証だった

飛び降りながら僕らは
顔を見つめ合い皮膚などに触れた
泣いたり笑ったり
怒ってしまったこともある
不思議と懐かしかった
落ちていく速度は
日々増していくというのに
わざわざ人を傷つけたり
自分を傷つけたりすることも
僕らはしてしまうのだった

飛び降りるように
僕らは生まれていた
いつか必ず地面に叩きつけられて
死んでしまうまで
投身自殺のように生きていた

いつか人は死ぬんだ
死ななければならないんだ
そんなことを言ったのは君だったかもしれない
君は窓の外を飛ぶ
一羽の鳥になって自由を手に入れていた

君の地面があるところまで落ちていく
お通夜は少し悲しくて
土は柔らかくとても良く湿っていた
 
 
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