世界で唯一、僕だけが、/水島芳野
 
青ざめた夕暮れの中で
世界のすべてが滅んでしまったような
そんな気がした。
 地図のような街並みの中に
 夜桜が零れる。
世界が素知らぬふりをする
僕だけがまるで迷子のように
突き放されたように
            深い悲しみと、きしむように無関心な世界の中で
            僕だけはよそ者だった
そのことに、咲き誇るようなよろこびを感じる
        黄昏
     たそがれ
 たそかれ
       誰そ彼。
 淡く滲み揺らぐ不安定な世界の中で
 僕だけが鮮やかなような
そんな気がした。
 青ざめた世界の中で
 僕だけひとり歩いていけるような、
そんな気がした。
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