湯舟/
小川 葉
湯舟に浸かると
そこは港
ゆっくり岸を離れてゆく
目を瞑れば見えてくる
この世にひとつだけの海を
満天の星々を頼りに
湯舟はどこまでも行く
扉が開く音がして
お風呂場に
息子が入って来たので
港に帰ると
お父さん
どこ行ってたの
と聞かれて困ってしまう
夜更け
妻の湯舟が港を発つ
遠くから
潮騒の音が聞こえている
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