繰り返される玉葱と匂い/小川 葉
 

僕はまだがまんしていた
冷水が満たされた
青い桶に突っ立って
爆風に耐えていた
これがほんとのがまん大会

すると青い桶の底が
突如ぶち破れて
青くて冷たいトンネルを
下へ下へと落ちていった

玉葱のにおいがしている
玉葱が匂いになって
何かしている

僕は家にいた
おそらく三歳くらいだ
僕は玩具のトラックに乗りたかった
どうしても乗りたくて
だだをこねていた
家族はみんな笑っていた
笑う理由を僕は知っていたのに
笑われてることが嬉しくて
僕はだだをこね続けた
それが演技なのかもしれなかった
がまんすることなど
必要なかった

玉葱のに
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