微笑/山中 烏流
布団を畳むために
一度、部屋へと戻ると
既に母が畳み終えていて
取り敢えず
携帯を弄り始める
すると
どれくらい経ったのか
薄い暖簾越しに
味噌汁の匂いが漂ってきて
私は
慌てて火を止めた
もしかしたら
焦げ付いてしまったかもしれない
そんな
慌てる私の姿を見て
くすくすと笑う母の肩から
ぱさり、と
毛布が滑り落ちる
少し
風邪気味なのだろうか
そういえば
昨晩は母のくしゃみが
やけに耳について
眠り辛かった気が、する
机に朝食を並べて
定番の挨拶を済ませると
母は曖昧な笑顔で
不意に
私の顔を見た
それが意味することを
私は知りながら
つい、とその顔から目を逸らし
ゆっくりと
味噌汁を流し込む
震える肩と
離れないくしゃみの音が
こんなにも、痛いとは
戻る 編 削 Point(7)