春への一歩/舞狐
 
私の苦手な春がやってくる

暖かい風に誘われ
木々が芽吹き
やわらかい日差しに
恋が飛び跳ねる春

陽気な笑い声に
振り向けば

そこには春がいた


ガラスの向こうなら
我慢できたのに

画面の中なら我慢できたのに

春は私の背中にぴったりとくっついて
ケラケラと笑っていた

一緒に笑えない私を
嘲笑うかのように
ケラケラと
明るく陽気に笑っていた

春の風が
笑い声を響かせて
春の日差しが
笑い声を輝かせる

一歩を出せば
私も春の一員になれるのに

わかっているのに
出せない一歩
眩しすぎて出せない
春への一歩
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