除雪車/小川 葉
夜が青く明けてゆく頃
除雪車の音が聞こえている
ひとつの戦争のように
降り積もる雪を魂に置き換えて
作業は続く
まどろむ真冬の月の目は
わたしたちと同じ
出来事だけを音で知り
見たことのない争いの果て
話者の声も失われてゆく
運転手の声
息遣いや仕草
筋肉の動くさま
ため息
それ以外にもにくしみと
やさしみとかなしみ
そして慈しみとはつまり
早く家に帰りたい
戦場の孤独
朝、わたしたちは
雪のない路を歩く
路肩に山のように積まれた
雪を死者と知りながら
春に向かって歩いてゆく
たくさんの命が続く
残された季節に向かって
路は開かれている
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