悲しみの一人旅/林 立平
 
□悲しみの一人旅 
悲しみが流れていった 
悲しみはミズナラの葉に乗り流れていった 
初めての一人旅だった
悲しみは沢を越え堤防を眺め、いつの日かの冷たさを思った 
夏の気だるい湿気から逃げたくて、いつの日かの冷たさを思った 
きらめく水面の上で、彼は乾いた孤独を味わう 
銀色の小さな魚たちが時々思いついたように葉をつついた 
水滴はいずれ流れを呼び、流れは河を呼び、河は海を呼び込み・・ 
海に至って彼は手紙の入ったビンを見つける 
真っ青な手紙は 
まるで空を映した様 
一言「いずれまた会おう」と 
明るい南の海の潮が香った
悲しみは泣き出した
海の広さが寂しくて一人の旅路が心細くて あまりに
海へと注ぐ強い日差しに
彼は少しずつ蒸発した
身構える彼にお構いなく、空は吸い込む 包み込む 
長い長い一人旅を終えしょっぱい涙はやっと止まった
遥かピンクの雲を目指して
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