遺影/
オイタル
指先に残った餡の粒を
綺麗に舐りとるその人の舌先は青白く
おなかがすいているんだからね
仕方がないね
おとといからずっとだよ
みんな涙にくれて
誰一人気にかけてくれないから
何しろその人は死んだのだから
祭壇の遺影の陰で
その人は小さく手をふる
遺族の前を人々は散り行き
明日のわが身に思いも致さず
しめやかな雲に覆われた空の下を
ゆるゆると横切っていく
それぞれの事情で込み合う
小さな空の下を
戻る
編
削
Point
(3)