万年筆/フクスケ
 
あの時
何を見ていたのか
白い紙の皮膚の上を
一度だけすれ違う
その時の
微風 に
時間が揺らぐのを

万年筆の
筆跡を見ていると
それは
痕跡のように
美しい
ブルーの濃淡
墨継ぎのような
呼吸
書き始めると
紙はインクと
つながる
世界と一体になり
私はカミになる
書くことから
書かれるものに
その境目さえ
分からなくなって
なだらかに
衰微する
世界との間(アワイ)

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