盲目の象/木屋 亞万
裏庭に透明の象がいる
ばあちゃんはそれを知っている
他は誰も信じてくれない
夜、布団に身体を任せて
僕は透明になる
(つまり僕は僕を抜け出すんだ)
そして象に会いに行く
暗闇の中をそろりそろりと歩く
タンスや机に足をぶつけたり
洗濯バサミを踏んだりすると痛いから
でも、どれだけ歩いても何もない事に
僕は気付いている
(足の感覚なんて置き去りさ)
けれど僕は手を前に出して恐々と歩く
そうしていると突然、温かい水に包まれる
(そこはもう象の身体の中なんだ)
(僕らは静かに溶け合うの)
恐怖は一瞬で安心感に変わる
(その瞬間が好きなんだ)
僕は生まれ
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