草原ではない/
井岡護
その針は何時でも人の貌をしていた
歩くようにして
ついに見る事のなかった
一枚の葉のようにして
ここであると思う
重なった露が目になれば良い
次に見る時には
ここではないと思わぬよう
またここに樹が生える
と語れたこと
一つだけ余ってしまった
それの為に
現に針は歩いていた
隔たりを撒く水袋もまた
強いる事には既に
色は無いということを教えて
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