春日幻影/Giton
 
日はでても見えぬ季節と
なり タワァ排煙をのぼせ
葱嶺(パミール)いよいよひかり

    ☆

むねをつく はばたきの音
夢ときえ
夜半(よわ)の水面(みなも)に 鐘楼の影

    ☆

陸奥国の
雪なほ斑(まだ)ら 枯れ原に
一毛(イチゲ)尋ねて ひがなさまよふ

    ☆

ふゆをこし
ましろきかほの袖うちゆ
はや小麦色の にほひたつらん

    ☆

われより体温あたたかい君の目に
もう八月の珊瑚礁うつる

    ☆

静寂(しじま)こえ
いつとも云はず けふ来たれば
まぼろしのごと舌重ねをり

    ☆

狂ふとも生きてあらなん
愛(は)しければ しりてこそ止(や)め
つる花のした

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