街になった家/
小川 葉
一人で眠った
翌朝僕は朝一番の陽だまりヶ丘行きのバスに乗った
途中、裏木戸町行きのバスとすれ違うと
妻が乗っているのが見えた
僕を探しに来たのだ
あるいは他に何か別な目的で
そう思って僕はモーテルのフロントにお願いして
手紙を預けてきた
妻宛ての
この街で離れ離れになってから
もうどれくらい経つだろう
あんなに小さな家で
僕らは家族でいられたのに
街はこんなにも簡単に
大切なものを飲み込んでいく
大切ではなかったことさえ
今は愛しいのに
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