タイヤ樹と春/まどろむ海月
 
果があれなのよ
アンタがそんなにサクラんしてどうすんのよ
って言ってあげたんだけどね もうすっかり
キがちがっちゃったみたいね
ねえ そんなことより 私たち二人で
もっと春めいたことしてみない
なんて 身体をすり寄せて言われてもなあ と
逆三角形は すっかり青くなって きょろきょろしている
まるいのも言ったそばから全身赤くなってうつむいている




青が 赤の体内に 精を放つと
紫色の星や花がいっぱい出来て
明け方の空に流れ出した








雲の白い起伏は
幸せだったあの頃に似ている



あまく温かいものを身体に入れても
想いはまともにならない

『春は残酷な季節 … 』







鳥はさえずりながら飛び立ったが

閉ざされた抽象の扉の向こうには

泣き崩れた具象の日々が




            









戻る   Point(5)