記憶の中の猫たち/フクスケ
夢うつつの
柔毛(ニコゲ)の感触
ずっと
夢みていれば
良かったのに
ひとの気配に
目覚める
微かな風の向き
古い記憶を
呼び醒ます
匂い
知らないひとの
匂い
過ぎ去った
数え切れない
季節の
花の
匂い
日向の藁の
匂い
通りを歩く
買い物籠の中の
今夜のおかずの
匂い
猫たちの時間は
ゆっくり忙しい
人の時間と
猫たちの時間は
同じではない
いつも 人の気まぐれに
かまってばかりは
いられない
目覚めて
長い欠伸をして
それから
背筋を伸ばす
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