木の葉のささやき/殿岡秀秋
 
東京都足立区立千寿第二小学校
一年三組の教室に入る
すでに半分くらいの同級生たちが来ている
ぼくは黙って自分の席に向かう

座るとうつむいて
机の上の
ナイフでえぐられた傷跡や
木の節穴をみつめる

担任がきて朝の会が始まるまで
じっとしているが
頭が振り子のように揺れてくるのを
落ち着かせようとして足を小刻みにゆする

子どもたちの雑談の響きが
ぼくの背を羽虫のように這う
背中を掻きたいが
握りしめている手が動かない

一時間目が終ると十分間の休み
授業中におしっこをもらさないように便所に行く
日当たりの悪い校舎の裏手に人影はなく
痩せた木がうつむい
[次のページ]
戻る   Point(4)