瑞々しい嘘/なつ
 
濡れる、まぶたにおいては
10年前のささやかな嘘だって
すこやかに息づいているのだ

腫れている、のどの奥のほうでは
君に贈りそこねてた嘘が
あばれて、あばれて、夜も眠れません

指輪の代わりに、心地よい嘘を
小指に絡まっているのは
かつて約束、と呼んでいたことば

強がりすぎた耳の底から
不意に込みあげてきた嘘が
やがて透明度を、満たして、こぼれだす

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