シンメトリー/千月 話子
 
湖に風は無く 輝いて水鏡

シンメトリーなあなたなら
真ん中まで歩いて行けますよ
と 遠く凪が囁いた

波紋 足跡 とろんとろんと表面張力
怖くなって涙を流すなら
左右対称にお願いしますね

左涙は独裁者の夢の跡 穴の開いた地図と沈没
右涙の言霊語り 思い浮かべて水の泡

世界の楽天家が 中心で
ふわふわ 浮かびながら
青空の入道雲を ただただ眺めているので
雨はまだずっと遠くで 止んでいるのだろうか?

湖に水面は無く
湖は 青空を映す青空になったので
それなら 鳥になれぬものかと
鳥のように 羽ばたいてみせた

空想が翼を作る 左目は嘘つきだと言う
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