再び渓流にて/北村 守通
いつの間に
日は傾き
いつの間に
水の中の
ステージは
閉幕し
いつの間に
鳥は
おやすみし
いつの間に
また
川は一人ぼっちになっている
いつの間に
もう
世界は薄い黒を重ねられ
いつの間に
花々は
舟をこぎだす
アンコールの喝采は
誰もしない
お帰りのアナウンスも
なにもない
星にはまだ早い
太陽にはもう遅い
かえるの声にはまだ早い
トビケラのダンスにはまだ早い
オドリバエ達の結婚式ラッシュにはまだ早い
帰路につくにはまだ早い
一人ぼっちの朽木に腰掛けて
一人ぼっちを吸い込んで
真っ黒になった
真っ黒になった
今日をもう少しだけ
魚篭に詰めさせてください
魚篭に詰めて
持って帰るためだけの
時間を少し
待ってください
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