抹殺されるもの、若しくは現れないことの功罪−「存在の彼方へ」を読んでみる17/もぐもぐ
というのは良くあることである。例えば人の視野は前方に広がっているため、後ろは見えていない。一瞬の間に同時に見ることができるのは、全方位のうちせいぜい1/3程度である。
残りの2/3は、「私」の世界から逃れていく。逃れているのに、「私」はそれに気づかない。私は世界の2/3を取り逃がすことしかできない。
けれども、「私」は、全てを見ていると主張する。なぜ主張できるのか。それは時間と記憶があるためである。記憶によって、一瞬前に見ていた前方と、一瞬後に見た後方とを、「私」は同時に把握することが出来る。一枚一枚の絵が積み重ねられて、アニメーション、動画になるように、一瞬一瞬の1/3が積み重ねられ
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