地下鉄と風/小池房枝
*地下の風
啓蟄
三月の風が吹いている
この風は
地下の何処まで届くだろうか
春一番ともなれば
地下一階ぐらいまでは届くのか
台風の日
風とともに地下が
水浸しになってしまわないのは何故だ
地下街から地下街へと
吹き渡る風はないのだろうか
地下鉄の
駅から駅へと
*地下鉄の風
電車が行き来するたびに
ごうごうと
巻き起こっているあれは
風鳴りは
一回一回消えてしまうのだろうか
さざなみが
波齢を重ねるようにうねりを生んで
強風地帯が現れたり
間欠泉みたいに
アップバーストしていたりはしないだろうか
電車一編成ずつ
[次のページ]
戻る 編 削 Point(9)