真夏の死/じゅらいち
 
何年前だっただろう
車の運転が出来た頃だった。
精神病院に隔週通院していた。
八月だったかも知れない
光と暑さに爛れていた。

五階建ての
茶色の北病棟から
灰色のの廊下があり
その突端に霊安室と言う標札が
掲げられている
くすんだ桃色の小部屋がある事は
以前から知っていた。

北病棟の駐車場にたどり着き
車内でマクドナルドのハンバーガーを喰っていたら
看護婦さんが霊安室のドアを開けるのを見た。

しばらくして
真っ白いシーツで覆われたベッドが
北病棟の廊下を通過していった。
霊安室に向かって行った。
真っ白いシーツは凸凹に突き出し
亡くなった患者さんの臨終の苦しみを
伝えていた。

ギラギラした日光が
一瞬、真っ白いシーツを照らした。
お婆さんと幼子が、たった二人
付き添っていた。

なんて事はない
ご遺体は霊安室に入って行き
看護婦さんはすぐさま
霊安室の鍵を閉めた。

俺はハンバーガーを喰い終え
茶色の北病棟の強化ガラスのドアを開いて
中に入っていった。
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