兄からの手紙/小川 葉
兄さんが帰ってきた
兄さんは
少し自信のなさそうな
顔をしていたけれど
兄さんの声は
あの頃と変わらない
兄さんのままで
兄さんがいないあいだ
僕がどれだけ不良になって
自分だけ傷つければいいものを
他人さえも傷つけて
途方に暮れていた日々に
光をさすように
兄さんが帰ってきたのだ
少し自信のなさそうな
顔をしていても
いてくれるだけで
僕は
あるべきように
背筋を正して
前へ歩いていける気がした
思えば
弟や妹たちに
兄さんみたいな姿勢を
示すべき存在に
なるべきだった
兄さんは
少し自信のなさそうな
顔をしていたけれど
いてくれるだけで
そのように
前へ歩み出させてくれる
兄さんの横顔が
とても好きなんだ
僕も自信がないけれど
兄さんの横顔を
ずっと待ってたんだ
戻る 編 削 Point(4)