逃げる/kiriko
逃げる
私は逃げる
腕を振って逃げる
呼吸を荒くして
ゼイゼイと
脚を幾度も踏み出し
バタバタと
チロチロと
草むらには
ウスバカゲロウの鳴き声がする
そばの池にはゲンゴロウが泳ぎ回っているのだろう
カサカサと
手のひらをやさしく撫でていた
子供の頃に見つめていたあの体を思う
家を出てきたのは
受験地獄のせいだった
答案用紙は白紙で
代わりに
あの街に出たいとか
頭の中に深い思いが満ちていた
そのもっと向こうの街に出たいとか
そして
私は逃げる
腕を振って逃げる
ゼイゼイと
答案用紙の前に
バタバタと
違う街へとさまよいながら
何もかも振り切ってここを逃げていく
生きてきた
向こうを
全て塗りつぶすように
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