あなたは満開の桜が嫌いだと/たりぽん(大理 奔)
 
桜の咲く春が嫌いとつぶやいたひとの
手鏡に映したそら、霞のようにたなびく
僕は戦うだろうあなたのために
僕は祈るだろうみんなのために


満開の花は汚れたあおを覆いつくして
春というかたちで、もしくは
雪が隠した泥のように
僕をほんとうから遠ざける

  (誰かを愛することは誰かを憎むことに似ている)

足下に散る花びらもあれば
まだ咲かないつぼみもある
それでも桜は満開

  わたしはみんな、が好きなんじゃない
  ひとひらだけが欲しいの、といったひと
  僕は戦わない、みんなのためには
  僕は祈らない、あなたのためには

  (みんなを愛することは、いくさと似ている)

桜を愛するように
憎むようになるのだろうか、僕は
みんなを愛するように
すべてを憎んで
雪が隠した泥のように
ほんとうから遠ざかり

  


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