ギザ十/にゃんしー
に走って帰った
背中で言ったさようなら
いまはもうない別れ道で
いまはもうない約束をする
十円のふちのギザギザ鈍く光る
そうギザ十で買えるものは 小さな春でした
ランドセルが軽すぎて
明日が来るのがこわかった
バカすぎてわからないならば
せめて好きだと言えばよかった
もしもあの頃に戻れたら
大丈夫だよ、て言ってあげたい
何が?と僕は聞くだろうから
そしたらギザギザ十円を
あのころの僕はいった
十円じゃ大人になれないよ
あのころの僕がいった
十円でなれるものはない
涙がにじんだモノクロの空
唇かんで殺した言葉
もしも信じたものがあるなら
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