航海/小川 葉
 
 
調律が合わなくて
ピアノが港を発ってゆく

小さな港で
すばらしい音楽を奏でていた
そんなピアノが

指先から音がした
触れてはいけなかった
白と黒の鍵盤に
わたしの小さな罪がある

今は波の音だけが
聞こえている
音のずれたメロディを
奏でている

ピアノが港を発ってゆく
目的地のはずだった
その港から
 
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