「 空にかかる爪あと 」/椎名
 
空に白い爪あとひとつ
段々と色を変えてゆく空に
段々と浮き立ってくる
細くて白い爪あとひとつ


薄暮れてゆく空の下では
灯りをつけはじめた街
行き交う車のヘッドライト
テールランプの赤


夜と昼の狭間
この時間が好きだ


まぶしいほどの太陽が
西の空に消え
残った白い雲の端を
うっすらと赤く染めていく


暗くなりきらない空に
白い爪あとのような月


ああ
このふたつの目に感謝しよう
こんな美しいものを見ることができる
この素晴らしさを
味わうことができる


雑多な想いを忘れ去り
しばし
夢の中を浮遊しよう


信号が赤から青に変わるまで






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