あたしの町へ/柊 恵
カートぎゅっと掴んで
「大丈夫よ」
そっと髪を撫でたけど
声の震えは隠せない
「お姉ちゃん、帰りたい」
撫でた頭に髪は無くて
あたしの手のなか
されこうべ
見上げる瞳は
虚ろな窪み
「お姉ちゃん…」
かわいそうな みづほちゃん
独りぼっちで
寂しくて
「大丈夫よ…」
朝まで抱いて
居てあげる
もう 独りには
しないから
一緒に帰ろう
あたしの町へ
黎明が闇を
引き裂いて
あたしは薄く
目を開ける
…そうだったのね
みづほちゃん
あなたが眠る
その場所に
パパが お家を
建てたのね
あたしの手のなか
されこうべ
哀しげ
小さく微笑んで
朝の光に
きらめき逝く…
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