ははおや/亜樹
 
ろでどうにもならない、金もない、時間もない。
そう私が答えると、心底厭そうな顔をする。

 ごめんなさい、かあさん。
 心配かけてごめんなさい。
 でももうどうしようもないんです。
 あなたのせいではないのだから、お願いだからもう放っておいてください。
 だって知らないんでしょう?
 私が風呂場で泣いてることなんて。
 だって気づかないんでしょう?
 私がときどき過呼吸の発作を起こしているだなんて。


 知らないのなら、ないのとおんなじことなのです。
 気づかないなら、ないのとおんなじことなのです。
 だったらもう、そのままでいてください。
 不意に見つけたそのときに
 不意に気づいたそのときに
 今更そんなに嘆くだなんて、
 それはあんまり卑怯じゃないですか。
 長い長い年月をかけて
 漸く私は自分に見切りをつけたのですから。
 こんな自分に一生付き合うより他ないと、
 漸く腹をくくったのですから。

 だから、だから、ねえ、かあさん。
 お願いだから、ゆるしてください。
 こんなむすめをゆるしてください。
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