冬の梢/夏嶋 真子
 

 
向かい風、吹雪の下校道。
風速10メートルと零下10度の結婚で生まれた雪のカミソリに
顔を傷つけられないように、後ろ向きで歩く。
 
「大丈夫だから。」って言って
かばうように前を歩いてくれる友達。
 
時間も距離も目的も前へ前へと進んでいるから
わたし達、前向きな後ろ向きだよね。
 
雪嵐、ただ黙って耐えることがわたしたちを北国の人へと育む。
 
 
家に着いたら母さんが温かい飲み物を用意してる待ってる。
 
 
あんなに激しかった風、やんだね。
 
しんしんとすべてを包む
雪は真綿、あったかい。
 
トクン、トクン、繋いだ手を
流れるキミの血、あったかい。
 
 
 
ただ黙って耐えているように見えるあの梢の中で
春は眠ってなんかいない。
 
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