船/小川 葉
 
 
ひさしぶりに実家に帰ると
お父さんが
船になっていた

甲板には母がいて
いつものように洗濯物を干したり
いい匂いがしてくる
調理室で料理をつくるのも
やはり母だった

嫁いだ妹も帰ってきて
わあ、お父さんたら、と言って
驚きもせず船内へ入ってゆく
わたしも妹に続く

妹は
船内にとても詳しくて
ぼくも昔はお父さんのことなら
妹に負けずに詳しかったはずなのに
その詳しさは
船になってしまった今では
何の役にもたたなかった

どうしてお父さんが船なんかに
とたずねると
船が少し揺れて
妹も船みたいになって
汽笛を鳴らすので
わたしはもう何
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