なにも。/Anonymous
 
たさは
まるで
愛の営みの最中に壮大な謀を企んでいるかのようだった。

僕の自意識から9歩遅れて

あの人は僕に気づいたようだった。

ただ、まるで、観ていた映画が途中で終わってしまったかのように
中断されて、不機嫌そうだった。

あの人は

足音も
足跡も

なく、砂の丘の向こう側に消えた。

そして、
僕のなかに空いてしまった
二度とあの人には会えないという
根拠の無い確信という空洞だけはいつまでも
溶けない氷のように消えることなく
僕のなかにいすわり続けている。
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