預言者/Anonymous
彼女の手は優雅極まりなかった。
注がれたグラスを指だけで持つのも
差し出された手に手で応えるのも
様になったし、僕はなんとかしてその手をとろうと
やっきになった。
トランプをきるのも
ページをめくるのも
いつだって切り札を隠している。
そんな主導権は淫美な絵画だった。
僕は是非にと自分に切り札を突きつけて、
僕に標準をしぼってほしいと切に願った。
彼女の手に
月はその顔をなでられるのを夢見て
水は掬われるのをブルブルいいながら。
彼女の手は
預言者だった。
その美しい目の
その美しい口の
そう、すべてを司る。
[次のページ]
戻る 編 削 Point(1)