中学受験の会場にて  【小説】/北村 守通
 
流の白泡の落ち込みの下に泳ぎ去って隠れてしまうのだった。
 教室という暗いストラクチャーの中で、白い答案用紙を真っ黒に埋めようとしているだろう彼らの姿と魚たちの姿が何故か重なって見えた。そこに新たな感傷を見出す前にチャイムが鳴った。彼らは長い旅路から一時的に解放されようとしていた。私の一時的な解放は彼らより少し後であった。私は火種を失ったタバコを携帯灰皿に突っ込み、顔の動きを確認するともはや温かいを通り越してあつくなってしまったベンチを後にした。釣りはまだお預けだった。

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