中学受験の会場にて  【小説】/北村 守通
 
 充分に温まったベンチに腰掛けると、つま先もまた冷たさと圧力から開放されたのだった。試験は始まったばかりで、校内は再び静寂に包まれていた。彼らの解放はまだ少し先のことだったので、私はタバコを吸いながらそれを待つことにした。
 その煙の色と雲の色とが違っているので、彼らは決して交わることはないだろうということを思いつつ、私は選別の対象となったことはあったが、選別をする側になかったことを思い出した。それについて考えてみることは少なくとも今のこの止まった時間から脱するには充分な様に思えた。
 試験実施者達はこれから大量の答案を正確に素早く処理するはずであった。それは最も公平な行為であるように思わ
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