ノスタルジック/Anonymous
物語を
ネガとポジという物事の光と闇に
ライトを浴びせ
一コマ一コマ丹念に読経のように
語り紡ぐ
黄金色に輝く映写館があるのだと
祖父はわたしに教えてくれた。
当時僕は6歳で
その存在を知るよりも先に
ブルーレイの存在を知ってしまっていた。
だけれど、僕がブルーレイに落とし込まれた
情報という名の物語の迫力を伝えようと
必死にがんばってはみたものの
祖父の語り口のノスタルジックな調子ほどに
相手に深い感銘を与えることはできなかった。
祖父は一生懸命驚いてみせてくれてはいたが
それは所詮孫相手の単なる芝居であることは
それくらいの
[次のページ]
戻る 編 削 Point(1)