数学/アンテ
 
から退院したときのことだ
さようなら を言いたかったのに
ようくんはあの時も薬で眠っていた
一週間に一度は治療を受けなければ
気管がふさがって息ができなくなるのだと
知ったのは
もっと大きくなってからのこと
なぜようくんだけ退院できないんだろう
なんて考えたのも
ずっと後になってからのこと

小さなころは
お医者さんになりたかった
どうにもならないことが
世の中にはたくさんあるだなんて
知らなかったから
なりたくないことばかりが増えるだなんて
夢にも思わなかったから
それでも
今でもわたしは
お医者さんになりたいと思っている
きっと これからもたくさん

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