楽園/山中 烏流
 
呼ぶことすら
ままならない、という
もどかしさ

秘密も大概にして欲しい

呟いたところで
誰に届くことも、ない



・宮殿


手のひらの輪郭が
薄く、ぼやけて
そこから
様々な色が
溢れ出していった

それを啄んだ雀は
窓枠に溶けていき
今も尚、さえずっている


もし、今もまだ
雀なのだとしたら

何故生きているのか
教えてほしい



・階段、そして門


格子の間から
そびえ立つ灰色が見える

階段を降りきった先で
私を待つものは
望んでいたものなのか
それとも、


機械的な動きで
門を開いていく
迫り来る様々の洪水は
私を
何処へ連れ去るのか
定かではない


もう一度、目を開けたとき
そこは
今よりも優しくて、
暖かいだろうか





.
戻る   Point(3)